小咄注・パクリ問題をネタにしたブラックです。真面目に読まないでくださいね(^^;)。軽〜く流してくださいませ♪ 「…それって、馬鹿?」 マルフォイのコメントは辛辣だった。 「それじゃぁ、そのことで腹を立てているロンのことまで馬鹿にしているように聞こえるわよ?」 「…そうか?」 テーブルを挟んだ向かいに座るハーマイオニーに指摘され、マルフォイはきょとんとした顔つきになって瞬きをした。どうやら、無自覚らしい。 「そんなつもりはないが…。わるかったな、ウィーズリー」 ソファーに陣取ったままの、尊大な態度で謝罪されても嬉しくもなんともないのだが、相手はあのドラコ・マルフォイである。人の注意を受け入れるようになっただけでも驚異的な進歩なのだ。そう思うことにして、ロンはへの字にひん曲げた口元を直しながら、頷いた。 「…それで?ロンはどう思ったの?」 マルフォイの隣でクッキーを頬張っていたハリーが問うた。 「ああ、そうなんだ、ハリー。これは非道い言いがかりってものだし、今回のことが氷山の一角であることは調べるまでもないことだろう?だから対策を立てなきゃ!」 「対策?」 「たとえばどんな?」 ハリーとハーマイオニーがほとんど同時に問うた。問題に対する逼迫感はまるでなく、むしろ必要性そのものを疑うような、そんな口調だった。 「まず犯人を捜し出して謝罪させる。それから、そいつが悪口を書いて歩いたサイトに訂正文と謝罪文を送らせるんだ。でないと気が済まない!」 友人達の冷めた反応に気がつかぬまま、ロンは指折り数えながら、犯人に望む償いを並べ立てた。ことは名誉に関わることだ。放置しておくなんて許せない。若い正義感が煮えくり返っていた。 「ひとつたずねるが…、犯人に心当たりがあるのか?」 マルフォイ生来の気怠い口調が、熱く語るロンに冷水を浴びせた。 「…ない。ないけど、それは根性で探す!」 「どうやって?ハリドラサイトの管理人ひとりひとりに問い質して歩くのか?引き合いに出された2チャンネルとやらを探して歩くのか?ばかばかしい。時間の無駄だ」 「そういう言い方はないだろう!マルフォイ!!君は腹が立たないのか!?」 「立たないな」 「信じられないよ!まともじゃないね!今この時間にだって、どこか知らないサイトでこのサイトの悪口や中傷が書き込まれているかと思うと、居ても立ってもいられないよ!しかも根拠のない悪口だよ!?耐えられないよ!」 「それなんだけどさぁ、ロン」 激昂するロンをなだめるように、軽く両手を挙げ苦笑を浮かべたハリーが云った。 「なんか変だと思わない?」 「変?」 「そうさ。確かに幸乃はパクリは良くないと云う主旨の文章をUPしてたけど、それは読者さんに向けて書かれた文章だよ?どこかのサイトの管理人に向けて書いたものじゃない。それに、幸乃は問題のサイト名を明らかにしてないんだ。なのにどうして自分のことだって怒り出すんだろう?」 「そうよ、ロン。落ち着いて考えてみて。その人は幸乃のパクリ関連のトークで怒って、よそ様のサイトで荒らし行為を行ったりしているそうだけど、どうして自分が批判されたと思い込めたのかしら?」 ハーマイオニーは意味ありげににっこり笑い、ロンに隣りに座るよう促した。 「自意識過剰すぎる」 さらりとドラコが云った。 勧められるまま、茶を喫した。ミントティの爽やかな香気が火照った熱をなだめてくれた。 「どういうことさ?」 カップをテーブルに戻して問うた。 「過剰な反応は、心当たりがあるということだろう?違うか?」 ドラコの唇が、皮肉っぽくつり上がった。 心当たり?どういう意味だ?ロンは頭を整理してみた。 幸乃は特定のサイトを挙げてパクリは止めろといった訳じゃない。パクリをされるとこんな風な影響があるよと書いただけだ。パクリと断定しているわけでもない。偶然の酷似の可能性を否定してはいない。 そう、パクリは本人の良心の問題だから、自覚があるなら引っ込めればいいし、違うと言いきれるなら堂々としていればいい。逆切れして、幸乃とそのサイトを誹謗するような行為に及ぶなんて見当違いだ。 その行動の根っこにあるのはなに? おそらく後ろめたさ。 つまり、行為の肯定?パクってましたってこと? 「…それって、後ろめたさがあるから、逆切れしているってこと?」 「そうよ。それって、パクったことを暗に認めていないかしら?自白してるみたいに響くんだけど?私たちの考え過ぎかしら?」 ハーマイオニーが肩を竦めて、軽く笑った。 「幸乃は、このサイトを知らない人かもしれないって、抜け穴を用意しておいたんだ。それなのに、噛みついてくるなんて、ここを知らない故の偶然の一致という可能性を自ら否定している。こういうの、語るに落ちたっていわないか?」 マルフォイが薄く笑って云った。 なんかこのふたり怖いぞ? 「自覚があるなら引っ込めればいいし、違うと言いきれるなら堂々としていればいい。自意識過剰も程度問題だね」 それに、とハリーが話を引き取った。 「幸乃はパクリに関しての、問い合わせはもらっていないんだ。掲示板やメールで戴いたのは文章への素直な感想や、パクられたことに対するお見舞いだった。当事者とおぼしき方からの抗議や問い合わせは一通もなかった。それを、「手を尽くしたけど駄目だった。あのサイトを潰すしかない」って書いて歩いてるなんて、妙な妄想癖でもあるんじゃないの?危ない人かも知れないよ?怖いじゃない?関わり合いになんてなりたくないよ。ねえ?」 …ほくそ笑む、君の方が怖いです。 ロンは思わず、目の前のクッキーに救いを求めた。 腹が満たされると自信も満ちるものらしい。ロンは生来の好奇心が疼いて問うた。 「…怖い人かも知れないのに、なんでこんなの書いたのさ?」 「ああ、事の経過を知らない人が、余所でそれ見かけて鵜呑みにしちゃわないように、念のための経過報告♪」 「そうそう。事情を知らない素直な人だったら、書き付けられた悪口雑言鵜呑みにして、幸乃は嫌な奴なんだ〜。酷い奴なんだ〜て信じちゃうでしょう?だからよ」 「まぁ、いらん世話だと思うがな。そもそも、当人を知らない第三者に、他人の悪口をぶちまけて歩くなんて、云ってる奴の品格を疑いはしても、内容を鵜呑みにはしないものだろう。そいつが信用できなければ、その言葉だって真偽のほどは怪しいのだからな。人間というものは、言葉よりも、行為で多くを語るものだ」 「…マルフォイ。君が云うと説得力があるねぇ」 「どういう意味だ?」 じろりと睨め付けられて、ロンは首を引っ込めた。 ハリーがくすくすと笑ってマルフォイをかまいだした。マルフォイはうっとうしそうに邪険に振る舞う。けれど、本音はそうじゃないってみんな知ってる。そういうことだ。言葉と裏腹なんてよくあることなのだ。 親しみから妬みへ、そして些細な行き違いや誤解から恨みへと転化することだって、十二分に考えられる。 有名すぎた「ハリー・ポッター」の名。誰もが関心を持ち、憧れや親近感を持っていた。でも当のハリーは、近寄ってきた人々に対してそう言う気持ちは持っていなかった。だからマルフォイとハリーみたいに「もっといい人だと思っていたのに、冷たくて嫌な奴だった」「知らない人が馴れ馴れしくしてきて不気味だった」なんて酷いすれ違いを産むんだ。人間関係は難しい。 幸乃の知らないところで、こそこそ喚いている人も、ひょっとしたら寂しいだけなのかも知れない。正面切って喧嘩をふっかけてこないのも、遠回りに騒いで顰蹙を買うのも。昔のマルフォイを思いだした。ハリーとすれ違って、嫌がらせでしか関わりを持てなかった不器用な彼。グリフィンドール中から顰蹙を買っても、学校中から嫌な奴と罵られても、彼はそれを止めなかった。形振りかまわぬその姿は、事情を知らないときは腹立たしいばかりだったけれども、事情を知ってからはそうではなくなった。 そう、彼は飢えていたのだ。心が。なにで満たせばいいのかもわからないひもじさに、泣き叫んでいたのだ。それを幼いという言葉で括っていいのかは判らないけれど、そういう子供っぽさが、根底にあった。なんだか可哀想になってきた。 (背伸びをせず、見栄を張らず、自分らしくあれば、それでいいと思うんだけどな。) と同時に、空寒くなった。幸乃の気性はベドヴィンだ。身内に甘く敵対者に厳しい。本気で怒らせたらどうなるかなんて、考えたくない。 「…ちょっと、ハリー?それ以上は仮眠室でお願いできないかしら?」 ハーマイオニーの言葉に顔を上げれば、向かいのソファーでは、ハリーがマルフォイをシートに縫い付けていた。 …おいおい。 ロンは再度クッキーに救いを求めた。この際声が引きつっているとかは見逃して欲しい。 「こ、このクッキー美味しいねぇ。誰にもらったの?」 「マルフォイのお手製よ?薬草学の実験のついでですって。いろんなハーブが…」 最後まで聞かずして、盛大に咽せた。 マルフォイのお手製!?しかも実験のついでって!?やばくないか?ものすっごく!? 「失礼な奴だな!!」 「そうだよ!ホントは僕がひとり占めしたかったんだぞ!」 …おいおい、ハリー。なんか違うよ。 本気で怒っているらしいバカップルを前に、ロンは脱力して天井を仰いだ。 2002/04/24 幸乃 敬白ブラックで申し訳ない。トークだときつくなりそうだから、小咄風に。 ま、こういうわけですんで、妙なもの見かけた方は笑い飛ばして下さい。 上の小咄はキャラが立ってりゃ、どんなネタでも小話になる、ってな実験小説。もちろん、フィックションだよぉ?うふふふふ。風刺はパロディの基本でしょう♪ 脈絡ないけど、このメンツで生徒会ごっこやって欲しいなぁ。 生徒会長=ハリー 副会長=ドラコ・ハーマイオニー 書記=ロンとかで、どたばた学園コメディ。誰か書いて下され。こういうのは現役学生さんの方が有利だと思うもん。 戻る |